(敬意を込めて敬称略)
「大事なことは、たいてい面倒くさい」
これはNHK宮崎駿監督のドキュメンタリーに出てきた言葉です。
見ていて思わず大きく頷いてしまいました。
アニメーション作業に比べれば足元にも及びませんが
昔の映像編集には面倒くさい事が多々ありました。
アナログ時代ならではの手間。
というわけで今回は
福岡での映像編集の変遷について。
80年代後半、制作進行時代。
本編集は1インチテープによるリニア編集、
仮編集はシブサンテープでのリニア編集が主流でした。
シブサンとは4分の3インチテープのことです。やや大きめの弁当箱くらい。
本編集といってもアナログだから簡単なブルーバック合成でも
人物のエッジがジラジラしていました。複数の映像を重ねると極端に劣化します。
しかしこれが普通というか最高の映像だったのです。番組編集に比べるとCMは
時間をかけて丁寧に作っていたと思います。
シブサン仮編集でつなぎのパターンを試したいとか
違うテイクを試したいなどが大変です。
アナログですのでひたすら最初に戻ってつなぎをやり直すしかありません。
できるだけ工夫してやるのですが古い編集機だからだんだん繋ぎ目がずれてきます。
想像した繋ぎをできるだけたくさん試したい。
映像編集(繋ぎ)の教科書的な基本はありますがシチュエーション、
芝居の感じ、セリフのやりとり、音楽などによって答えは一つではなかったりします。
全ての繋ぎを見て納得したい。体力勝負。睡魔との戦いです。
アナログ時代の思い出をもう一つ。
編集前にどういう映像を撮ったか、何テイクあるかなど
データ出しをするときに使うモノクロ映像キャプチャープリンターがありました。
メーカーは忘れましたが初期型のプリンターなので反応が恐ろしく遅いのです。
ジリジリジリジリとゆっくりゆっくり動くプリンター。
夜作業が多いので、これもまた睡魔との戦いになります。
90年代に入り、1インチテープはD1デジタルテープに変わりました。
同時にD2デジタルテープ、デジタルベーカムテープも登場。
大元のテープがデジタルコンポーネント信号のD1テープに
変わったことで理論上は何回重ね合わせても劣化はしない。
この進化で合成作業やエフェクト、文字の動かしなどの制限はなくなりました。
しかしリニア編集のままなので繋ぎ作業の面倒くささが
解消されたわけではありません。
そして1996年福岡に初めてノンリニア編集機が導入されました。
清川のT&E編集室。
すでに東京ではノンリニア編集がスタンダードでしたが遂に福岡にもやってきたのです。
イギリスクォンテル社製HALハルという名前の編集機械。
クォンテル社にはハリー、ハル、ハリーの後継機のヘンリーなどがありました。
1年後には仮編集を専門にこなすAVID編集機も導入されました。
ノンリニア編集機を簡単に説明すると、どこからでも繋ぎを変えられる。自由自在。
ハードディスクの中だからいくらでもコピーできて何タイプでもすぐにできる。
しかも合成編集も違和感なくキレイに仕上がる。
今の時代パソコンでできる普通のことですが
リニアテープ編集時代には魔法のような編集機械に思えました。
ハルは小さめの冷蔵庫くらいの大きさです。
しかし容量は2ギガ弱しかありません。今はスマホでも64ギガありますから
時代の流れはすごいです。約20年でこの進化。
その後、ノンリニア編集機はクォンテルからカナダのディスクリート社製が
スタンダードになり、機種もインフェルノからフレームへ、
同じくファイヤーからスモークへ変わりました。
今は東京と福岡の差は、ほぼありません。
編集機も同じ。使用するカメラも同じです。
映像編集での面倒くさい作業はなくなってしまいましたが
「大事なことはたいてい面倒くさい」この言葉は
面倒くさいことを自ら率先して見つけて、やり切って人間力をつけろという
宮崎さんのメッセージだと思います。
宮崎駿監督の作品で好きなものは、ずっと変わらずナウシカとトトロです。
J GEILS BAND
Jガイルズバンドいいです。オススメです。
しかしここ数年?十数年JGBが話題になったことはありません。誠に残念。
JGBが再評価されない原因は
ギタリスト至上主義の洋楽ファンが多いからだと思います。
洋楽邦楽問わずロック系雑誌は昔からギタリスト中心。
「プレイヤー」「GUITAR MAGAZINE」などギター雑誌は今も人気あるし、
ROCK=エレキギターという図式は揺るぎません。
例えばJGBと同じブルーズ、
R&Bをベースにするオールマンブラザーズバンドにはスライドギターの名手デュアンオールマン、
リトル・フィートにはローウェルジョージ、イギリスならツェッペリンのジミー・ペイジ、
パープルならリッチー、それぞれにわかりやすいギタリストアイコンがいます。
JGBのギター、リーダーでもあるジェロームガイルズは
そんなタイプではないのです。早弾きするとかブルージーに延々長いソロを弾くとかもしません。
できないわけではないがしないのです。
ギタリスト特集とかにもほとんど出てきませんから本当のところはわかりませんが
基本アンサンブル主義だと思います。
マディのシカゴブルーズも歌を中心に置いたアンサンブルがキモだから
ジェロームガイルズも同じ考え方だったのでしょう。
そんな控えめなジェロームガイルズ好きです。
ただJGBには強烈な2枚看板がいます。
ヴォーカルのピーターウルフ とハーモニカのマジックディック。
ピーターはやさぐれチンピラ風、超早口トークも得意技。
自由にステージを駆け回りお客さんを煽りまくる。ヤンチャな暴れん坊タイプ。
ちなみに奥さんは女優のフェイダナウェイ。
ハープ担当マジックディックは超絶テクニック!曲の隙間にガンガン吹きまくる。
吹きまくるわりには冷静で渋い風貌。白人ブルースハープではトップクラス。
オリジナル曲を担当するピアノ&キーボードのセスジャストマンのセンスもいい。
70年代後半、世界規模でヒットした曲アイディアはセスさんの音楽センスのおかげだと思います。
JGBはよくアメリカのストーンズと表現されますが
私はタイプが違うような気がします。
BLUES R&Bのルーツは同じ、
控え目なギタリスト、ジェロームとキースも似ていますが全体で見ると違うと思います。
何が違うかというとJGBはいい意味でパーティバンドだと思うからです。
ストーンズのような哲学はない。憂いがない。戦略がない。
そんなところがライブ命、JGBのいいところのような気もしますが、、、。
ついでに言うとストーンズとの1番の違いはドラム。
チャーリーワッツの知的でセンスいいドラミングに比べると
JGBのスティーブンジョーブラッドは元気なドタバタタイプ。
小さな事は気にしない、豪快な性格。
「俺たちゃいつでもどこでもライブやるぜ、かかってこいやー」みたいな感じ。(想像)
実際にJGBは「一晩中でもライブを演れる」と豪語していたそうです。
アンコール5回、6回は当たり前。
オリジナルアルバム70年代までのLPは、ほぼほぼハズレなし。
特に好きなものは初期だと70年作のファースト。(LP写真①)
ピーターウルフ&セスジャストマン黄金コンビのまさに一発目「WAIT」
オーティスラッシュ作「HOMEWORK」も収録。タイトで切れ味鋭い若々しい姿。
73年作の3枚目「BLOODSHOT」(LP写真②)も外せない。
ライブで欠かせない「SOUTHSIDE SHUFFLE」収録。
中期から後期だと74年作「悪夢とビニールジャングル」。(LP写真③)
バンドの代表曲「DETROIT BREAKDOWN」収録。イントロのピアノフレーズがシビれます。
77年作の「モンキーアイランドの噴火」(LP写真④)もいいです。
ピーターが切実に歌い上げるバラード曲「I’M FALLING」収録。
78年以降「SANCTUARY」から「LOVE STINKS」「FREEZE FRAME」で一気に
大ブレイク世界的バンドへ突き進むが83年ピーターさんが抜けてあっけなく解散。
2017年ジェロームガイルズ自宅で死去。享年71歳。R.I.P.
JGBと言えばライブです。活動期間中3枚のライブアルバムがあります。
初期の姿を捉えた72年作「LIVE FULL HOUSE」(LP写真⑤)
デトロイト録音、疾走感抜群。
中期の地元ボストン凱旋公演76年作「BLOW YOUR FACE OUT狼から一撃」(LP写真⑥)2枚組。
おそらくこのあたりがバンド絶頂期ピークでしょう。文句なしの一撃。
後期のライブが82年作「SHOWTIME!」(LP写真⑦)
大ブレイク後、解散寸前だがライブはいいです。
A面ラストの「LOVE RAP」からB面1曲め「LOVE STINKS」の繋がりは面白い。
楽しませてくれます。レコードならではの面白み。最初聞いた時はあれっ?って思いました。
最後にもう一つ、マーティンスコセッシ監督総指揮
ブルース生誕100年記念プロジェクト映画の編集本(BOOK写真⑧)
にピーターウルフ の寄稿文が載っています。
大学生時代、ピーターの地元ボストンに
訪れたマディウォーターズ御一行やハウリンウルフ御一行を
自分の部屋に招いたことなどブルース愛溢れるエピソードが面白すぎる。
THE SHIRELLES / GREATEST HITS 21
50年代、60年代のガールグループの中で一番好きなのはシュレルズです。
他にもシャンテルズ、ロネッツ、クリスタルズ、ディキシーカップス、シャングリラス、
シフォンズ、エキサイターズ、レインドロップス、モータウンのマーヴェレッツ、ヴァンデラス、
そしてシュープリームスなど、、、あ〜キリがない。
好きなグループがたくさんあるガールグループの中でなぜシュレルズが一番か?
単純な理由ですが、いい曲が一番多いからです。
他のグループと比べても圧倒的にいい曲が多い。不思議です。
シュレルズの謎。人当りがいいのか?プロデューサー受けがいいのか?
いい曲を提供してもらえる強運の持ち主がメンバーの中にいたのか?
裏工作、根回しがうまいマネージャーがいたのか?
シュレルズはニュージャージー州バザイック出身、ハイスクールの友達4人で結成。
名前の由来はリーダーのシャーリー(SHIRELY)さんからとったもの。
私のシュレルズソングベスト5は、「WILL YOU LOVE ME TOMORROW」「SOLDIER BOY」
「BABY IT’S YOU」「FOOLISH LITTLE GIRL」「DEDICATED TO THE ONE I LOVE」です。
VARIOUS ARTISTS / GERRY GOFFIN & CAROLE KING SONGBOOK
シュレルズ流れでこの方達を。
ジェリーゴフィンとキャロルキング。二人で作った曲を集めたLP。
二人は夫婦です。(当時)50年代後半から活躍する作詞作曲チーム。
作詞がダンナのジェリー、作曲が奥様のキャロル。
キャロルキングはその後、シンガーソングライターでブレイク。
めまいがするくらい素敵な曲ばかり。最強の夫婦。(当時)。
私のゴフィン&キングソングベスト5は(シュレルズ外して)
「LOCO-MOTION/LITTLE EVA」「CHAINS/COOKIES」「ONE FINE DAY/CHIFFONS」
「DON’T EVER CHANGE/CRICKETS」「HAFLWAY TO PARADISE/BOBBY VINTON」
次点「SOME OF YOUR LOVIN/DUSTY SPRINGFIELD」です。
NICK LOWE & ELVIS COSTELLO / BABY IT’S YOU 1984
シュレルズ流れでもう一枚。
シュレルズ1961年のヒット曲「BABY IT’S YOU」
バートバカラックの作品をニックロウ&コステロでカヴァー。
ビートルズもプリーズプリーズミーの中でカヴァーしていますが
ニック&コステロバージョンの方が好きです。
SEX PISTOLS
様々な所でいろいろな角度から語られてきたバンド。
成り立ちから解散まで、物語としても面白い。
歴史的重要なポジションだから後日談も尽きない。
中でもプロデューサー、クリストーマスのレコーディング裏話は
納得感がありました。きめ細かに多重録音されている事とか、
ヤンチャなバンドイメージとは逆にレコーディングでは真面目で
前向きな姿勢だったとか。
ファッション、ジャケデザイン、
マネージャーマルコムマクラレンの仕掛けなど含めて
戦略的に発明された完璧な商品にも見える。
過去のロック遺産をうまくまとめ新しい音にして自らを葬り去る荒技。
一瞬の輝き。完全無欠の爆発。
実際は偶然が重なりあって時代の寵児になっていったと思いますが
世界一有名なパンクレコードが出来上がった根幹には
メンバーの志が純粋でタフでセンスが良く、
人間力の器も大きかったからだと思います。
「勝手にしやがれ」は録音してもらったカセットがあったので
初めて買ったレコードは未発表曲が入ったベスト盤でした。
「THE VERY BEST OF SEX PISTOLS AND WE DON’T CARE」
ジュリアンテンプル監督の快作?もよく聴いた想い出の1枚。
「THE GREAT ROCK ‘N’ ROLL SWINDLE」
制作意図がよくわからないこれも同じく想い出の一枚。
「BIGGEST BLOW」
グレンマトロックのリッチキッズも好きでした。
プロデュースミックロンソン。
特にミッジユーロ作、B面2曲めの「YOUNG GIRL」は
高校自転車通学時、どんよりした気分を晴らしてくれる朝の定番曲。