2020.01.11 /

フジジュンのROCKどげん?12

(敬意意を込めて敬称略)

地方ロケ撮影時に必ず行く場所があります。

それはレコード屋さんです。

ロケハンの合間や撮影本番予備日などに行きます。

 

その土地の美味しいものとか名所とかに誘われたりするのですが丁重にお断りしてレコ屋へ。

無駄な時間を減らすため事前に調べて優先順位を決めて行きます。

 

地図を片手に知らない街のレコ屋を探す。

店に入る時のちょっとした緊張感。ほのかに香る中古レコードの匂い。

そして店内に流れるBGMに耳を澄ます。まずは店内のレイアウトを確認。

次にレコ屋の人を見ます。頑固オヤジ系かほのぼの音楽好きお兄さんか、

バイト君か。そしてロックのハコから見始めます。

だいたいロックのハコを見るとその店の特徴がわかるからです。

ジャンルの分け方、値段設定を見ると店の経営理念みたいなのが

伝わってきます。

その時々の自分の気分も関係するのですが買ったり、買わなかったり、一喜一憂。

 

CM広告業界に入る前に私はレコード屋にいました。

福岡の「JUKE RECORD」ジュークレコードという所です。

カメラの専門学校時代のバイトから約4年間。

場所は天神3丁目昭和通り沿い、応順ビル。風街という喫茶店の2階でした。

親不孝通りにも近く、週末などその界隈は人で溢れかえっていました。

すれ違う人とぶつからずに歩くのは不可能なくらい。昭和終わりのバブル期。

 

ジュークレコードは1977年創業。

店主は松本 康(こう)さん。

名前の由来はデルタブルースの社交場 JUKE JOINTと塾(ジュク)の先生だったからだそうです。

 

松本さんは大学生時代、福岡の伝説的ロック喫茶「ぱわぁはうす」でアルバイトをしていました。

その時に鮎川誠さんと出会いサンハウスを身近に感じつつ

鮎川さんのレコード講座「ブルースにとりつかれて」をお手伝いして音楽の深みにハマり、

その後ジュークレコードを立ち上げます。

 

ブルースやロックの重要盤を自ら直輸入。

当時まだ輸入盤でしか聞けなかった最先端のロックやブルースなどのルーツミュージックを

中心に徐々に揃えていきました。

パソコンメールもない時代、大変な作業だったと思います。

確固たる信念と情熱がないとできない。

松本さんは鮎川さんたちから教わった音楽の楽しさを

若い人たちに教えたいという気持ちが強かったそうです。

 

初めてジュークレコードに行ったのは高校生の時です。

松本さんの第一印象は「デカっ」でした。そして「怖っ」。

身長185㎝、質問したら3倍くらいの熱量で返ってくるから下手な質問はできません。

覚えているのは黒人音楽の質問をしたらその質問の答えではなく

ブリティッシュビートを聴きなさいと言われたことです。

今思うと、ヒヨッコパンク少年にナイスなアドバイスだと思います。

 

バイトするキッカケは歳上のバンド友達、ナカタニくんがジュークでバイトしていたからです。

ナカタニ君はアンジーというバンドをやっていてブースカという奇妙な芸名がありました。

「フジタもジュークでバイトしたらどげん?」と誘われジューク一門へ。

バブル時代レコードもよく売れていました。

福岡市東区、香椎に新しい店舗を出すという話になり

ナカタニくんと2人で香椎店に原チャリバイクで通っていたのはいい思い出です。

しかし香椎店は長続きせず閉店になりました。

もうちょっと自分が頑張って売り上げに貢献できたら、、、松本さんに迷惑かけたのではないかとか

やや心残りです。

ナカタニくんとはその後ずっと付き合いが続き今でもCM音楽など作ってもらっています。

 

ジュークは海外へ赴きレコード買い付けもやっていました。

イギリス、アメリカなど直接行ってレコ屋を探し大量にレコードを買うのです。

私もロスアンゼルスの買い付けに一度だけ一緒に行きました。

2人だけなので大変です。レンタカーを借りて地図をチェックしながら

ロスアンゼルスを東へ西へ、南へ北へ。

松本さんがレコードを抜いて私が車まで運ぶ。その繰り返し。

ほとんど自分のレコードは買えませんがいろんなレコード屋に行けるのは楽しい。

パサデナというところではデカイ広場でレコードセールもあっていました。

広場全てがレコード。アメリカはスケールがデカイです。

ホテルの部屋もレコードの山です。

郵送だと税金がかかるからRCA盤とCOLUMBIA盤のみを抜いて

手荷物にするという夜作業がありました。

めんどくさいなぁと思いましたが松本さんには言えませんでした。

ロスアンゼルス買い付け 松本さんと。サープラスレコード前。

ロスアンゼルスレコード買い付け、キャピトルレコードタワーの前。

ロスアンゼルスレコード買い付け、アトミックレコード前。

 

 

松本さんは70年代終わりからずっと福岡の音楽シーンを裏から支え

見守り、時には苦言を吐き、今でも影響力があると思います。

ジュークで音楽に目覚めた人、音楽の深さ、楽しさを知った人は

数え切れないくらいいると思います。

 

福岡へお越しの際は是非ジュークレコードに足を運んでください。

現住所は

福岡市中央区天神3−6−8 2階

092−781−4369

13時オープン19時まで。月曜、木曜休みです。

常時在庫50000枚! 基本オールジャンルですが 特に強いのは黒人音楽。

ブルース、ゴスペル、JUMP&JIVE系、R&B、ソウル、ファンク、ヒップホップまで。

大阪から西の街ではジュークが一番!!

 

HOME OF THE BEAT  

KEEP ON JOOKIN’

 

ジュークレコード入り口

ジューク店内、音楽図書館!

ザディコのクリフトンシェニエのコーナーまであります!

サンハウスのトートバック!

サンハウス Tシャツ!!

昔の昭和通り沿いにあった頃のジュークレコード

 

追記。お客さん同士で秘かに話題になるのは

中古レコードや輸入盤を店に出す時に松本さんがプライスカードに一言書く松本格言です。

色々ありますが有名なのはパイレーツのプライスカードに「必聴!一家に一枚パイレーツ!」

実際日本のレコ屋の中で一番パイレーツを売った店だと思います。

日本の片隅でこんなにパイレーツを応援する店があるとはご本人達もご存知なかったでしょうね。

私が個人的に好きなものは「涙の再会!この機会買い逃すまじ!」です。

この言葉が書いてあるとどうしても気になるし、

この先このレコードとはもう出会えないんじゃないかと思っていました。