第3回 月レコ 音楽世界旅行with RY COODER 報告!
今回のテーマは音楽世界旅行。そのままワールドミュージックを
紹介しても面白くないのでライクーダーのアルバムに関係した
世界のミュージシャンを軸に構成しました。
大好きなライクーダーの特集はいつかやりたかったので
こじつけ企画のようなものです。
スライドギターの達人及びマンドリン奏者、アメリカンルーツミュージックの伝道師、
そして世界各地のミュージシャンとの秀逸なコラボ作品。
ライジングサン時代の旧友タジマハールとのニューアルバムもリリース。
まだまだ元気な75歳。
BOP TILL YOU DROP / RY COODER / 1979
ライクーダーとの最初の出会いは1982年、高校卒業直後
「BOP TILL YOU DROP」。
ジャケット写真、音質、歌、演奏全てが大人な感じに思えました。
激しいパンク系を中心に聞いていた少年にはある意味衝撃的。
カヴァー曲が多いというのも魅力的。
ストーンズ同様、過去作品への橋渡し的存在でもあります。
ロックからブルース、ゴスペル、R&B、ワールド、
様々な音楽ジャンルへ導いてくれる。
ライクーダーを個人的な印象で表すと(イメージです)
好奇心旺盛な好感が持てる変人。
ヒット曲とか名誉とかには特に興味がなく豪華な家や車などいらない。
とにかくギターが好き。気に入ったギター1本ありゃいい。
GET RHYTHM / GET RHYTHM 1987
オープニングは、この曲と決めていました。
音楽世界旅行とは言えませんが一番好きなアルバムなので
これしかないなと。
ジョニーキャッシュの曲ですが
ライクーダーサウンドに完璧に仕上がっています。
モノクロのMVがまた素晴らしい。
ハリーディーンスタントンの芝居(表情)もいい。
[CUBA]
CHAN CHAN / BUENA VISTA SOCIAL CLUB / 1996
世界的に大ヒットしたブエナヴィスタソシアルクラブ。
キューバのレジェンドミュージシャンとライクーダーのコラボ作品。
アルバムもいいですが映画が素晴らしい。今見ても面白い。
メンバーのキャラがいい。ヴィムヴェンダース監督の構成も抜群。
カメラもいい。ハバナの街の切り取りも美しい。
90年代なのでまだまだキューバには
ちゃんとした撮影機材もなかったと思うので大変だったはず。
撮影はB.V.S.C.アルバム録音の1年後、
ボーカル担当、イブライムフェレールの
ソロアルバム制作時に行われたと思われます。
このアルバムもB.V.S.C.とほぼ同じメンバーで録音されていますが
ライクーダーのギターはB.V.S.C.録音時よりもいい。
実際インタビューでB.V.S.C.の時は
自分のギターをうまく表現することができなかったと語っています。
翌年もう一人の女性ボーカル、
オマーラポルトゥオンドのソロアルバムも制作されますが
ライクーダーは不参加。B.V.S.C.から派生した2枚、
いずれも内容いいです。おすすめです。
IBRAHIM FERRER / 1999
OMARA PORTUONDO / 2000
そして、ライクーダー的B.V.S.C.総決算。
B.V.S.C.プロジェクトの時に知り合った
マヌエルガルバンとのコラボ、マンボシヌエンド。
キューバ音楽を自分なりに消化し
緻密に練られて作られたアルバムだと思います。
マヌエルガルバンはライクーダーと同年代キューバ人ギタリスト。
B.V.S.C.には参加していませんが
イブライムフェレールソロアルバム録音には参加しています。
映画の中でもライと演奏しているシーンがあります。楽しそう。
曲は1958年全米ナンバーワンソング、
キューバ出身ペレスブラードの曲。パトリシア。
PATRICIA / RY COODER & NANUEL GALBAN / MAMBO SINUENDO 2003
世界情勢に翻弄された国。小さな音楽大国、キューバ。
アフリカからの奴隷と、ゆるいスペイン統治で独自の音楽文化が生まれ
カリブ、南米、ラテン音楽の中でも突出した音楽を育んだキューバ。
アメリカの経済的支配下からカストロ、ゲバラのキューバ革命によって
社会主義に傾き、キューバ危機を経てソ連崩壊とともに再び
資本主義経済に戻りつつある国。
頭では分かっていてもやはり日本からは遠い印象です。
最近キューバ関連で一番印象深い出来事は
2016年オバマ大統領キューバ訪問直後に行われた
ストーンズのハバナフリーコンサート。来場者100万人。
南米各地を回り最後の公演地がキューバ。
この模様はストーンズのドキュメント映画、
オレ!オレ!オレ!A TRIP ACROSS LATIN AMERICAと
ハバナムーンLIVE IN CUBAに収められています。
南米とキューバの熱狂は凄まじい。圧倒されます。
日本の裏側、死ぬまでに一度は行ってみたい。
ライクーダーから逸れますが
キューバ音楽をもう少し。
南京豆売り / DON AZPIAZU & ANTONIO MACHIN
スープレーベルから80年代に発売されていたラテンの古典シリーズ
ジャケットも企画選曲も丁寧に作られている素晴らしいシリーズ。
80年代アシスタント時代だった私には
到底買えるレコードではありませんでした。
ここ数年コツコツ集めています。
曲はモスラのピーナッツもカヴァーしていた南京豆売り。
ドンアスピアス楽団とアントニオマチン。
1930年録音。洒落てるイカす。
MAMBO / マチート楽団&チャーリーパーカー
3大マンボキングと言われるティトプエンテ楽団、ティトロドリゲス楽団、
そしてここに紹介するマチート楽団。
なんとソロサックスはチャーリーパーカー。超スリリング。1950年録音。
[HAWAII]
ライクーダー初期を6作目のショータイム(ライブ盤)までとすると
その中で最重要作は5作目「CHICKEN SKIN MUSIC」でしょう。
4作目「PARADISE AND LUNCH」の続編的な扱いもされますが
創造性、音楽の幅など前作を上回っていると思います。
ゲストのギャビーパヒヌイ&フラーコヒメネスの参加が
ライクーダーの表現力を広げたような気がします。
YELLOW ROSE / CHICKEN SKIN MUSIC / 1976
ライクーダー本人がライナーノーツの中でハワイの至宝と語るギャビーパヒヌイ。
最初はハワイの音楽家と言われても正直ピンときませんでした。
というか観光音楽的なハワイアンミュージックは耳にしたことはあるが、
ちゃんとしたハワイ音楽を知らなかった。
イエローローズのなんとも不思議なハワイミクスチャーテイスト。
一気に引き込まれました。
これをきっかけにギャビーパヒヌイのLPを探すが全く見つからない。
メジャーな人ではないしインターネットもない、しかも地方の福岡。
簡単に出会うことができない時代でした。
そして忘れかけていた時に偶然見つけたのです。ゾクっとしました。
ライクーダーの名前もある、裏ジャケには上半身裸のライも載っている。
そそるジャケットデザイン。帰って速攻で聞きました。
こういう体験って最近ないですね。ネットですぐ見つかるし、
すぐ聞けて、すぐ買える。
ありがたい世の中になったような、あっけないような。
しかし目的までショートカットできる分、
辿り着いてからより深く楽しめるような気もします。
ギャビーパヒヌイの内容は想像以上。満足度120パーセント。
聴き始めて40年近く経ちますが今でも最初聞いた時の新鮮な印象のまま。
ほんとに不思議な音楽。ハワイ音楽独特の響きだけではない、
それ以上のものを感じるギャビーマジック。
伝統的なものを根っこに持ちながらジャズやジャンゴラインハルトなど
積極的に聞いていたという本人の性格、気質も反映されているのでしょう。
よそ者のライクーダーを快く受け入れる器の大きさもステキ。
すてきな魚ALOHA KA MANINI / GABBY PAHINUI HAWAIIAN BAND VOL.1
最初に出会ったLP。74年&75年録音。ギャビーの最高傑作。
2007年にCDで再発された時はオリジナルイラストジャケットになりました。
GABBY PAHINUI HAWAIIAN BAND VOL.2
これはVOL.1録音時と同じ時に録音された物とハリウッド録音を足したLP。
内容はVOL,1同様いいです。アーリースウィングジャズっぽい曲もあります。
ライクーダーももちろん参加。
実はVOL.1でもハリウッドでストリングスなど追加録音されています。
その担当は「ITALIAN GRAFFITI」で有名なニックデカロ。グッジョブ。
TWO SLACK KEY GUITARS / GABBY PAHINUI & ATTA ISSACS
ギャビーのハワイアンバンドにも参加していたアッタアイザックスとの共演盤。
69年録音。
ギャビーをサポートしてきたアッタ。控えめで物静か。ギターの腕前は超一品。
ふたりのギターでの会話、ジャケ写真もいい。
SONS OF HAWAII / SONS OF HAWAII
ギャビーが参加したサンズオブハワイ。71年録音。
ギャビーの透き通るような瑞々しさと温かみを兼ね備えた
12弦ギターが随所に冴え渡る。
GABBY / GABBY PAHINUI
ギャビーソロ第一弾。72年録音。
このアルバムが一番ギャビーのギターが
前に出ているような気がします。力強いスラックキーギターサウンド。
アンサンブルというより弾き語りのような印象。
RABBIT ISLAND MUSIC FESTIVAL / GABBY PAHINUI
ラビットアイランドミュージックフェスティバル。
フェスのライブ録音?と思ってしまいますが全く違います。
ギャビーソロ第2弾。73年録音。
第一弾はギャビー自宅録音。
そしてこのセカンドは自宅近くのラビットアイランドという
ところで録音されたそうです。なぜこんなタイトルにしたのか?
ジャケット写真がいいです。
1曲目はカモメの鳴き声から始まります。ナイス。
1作目よりアレンジが凝っていて
次作のハワイアンバンドvol.1に直結するような内容。
ギャビーパヒヌイとの出会い以来、
ハワイ音楽はなんでも受け入れる体質になりました。
ゆるいフラ系からIZ 、ジャックジョンソンまで。
オータさん、山内雄喜さんなど
ハワイ伝統音楽を伝えてきた素晴らしい方々もおすすめです。
余談ですが撮影でハワイに行った時に
ハワイ島のマウナケア山に行きました。
4200メートル。すばる天文台があるところです。
夕方、車で頂上まで行きます。一気にマイナス温度。
そこから日没を見て、その後星空を見るツアーです。
4200メートルからのサンセットはヤバいです。
地球が丸いということも目視確認できます。
暗くなると360度星空。見たことない星の数。星の光。
マジでヤバいです。
気をつけないと空気が薄いのでナチュラルハイ状態になるので注意。
ハワイに行く人には、このツアーをいつもオススメしています。
[OKINAWA]
喜納昌吉&チャンプルーズ / BLOOD LINE
ライクーダーの初来日は1978年「JAZZ」リリース時。
多分この時に何らかの紹介?詳細はわかりませんが
1980年、喜納昌吉&チャンプルーズのセカンドアルバム
「BLOOD LINE」に参加しています。
B面1曲目「すべての人の心に花を」のアレンジとスライドギター。
特に間奏のスライドが絶品。
この歌は世界的にも広がりいろんなヴァージョンがありますが
オリジナルが一番いい。
[TEX / MEX]
チキンスキンミュージックから長い付き合いの
アコーディオン奏者フラーコヒメネス。サンアトニオ出身。
その後、ライにとってかかせない存在になりました。
フラーコヒメネスが有名になったきっかけは
ダグサームの73年の名盤「DOUG SAHM and BAND」
たぶんこれをライが知って声をかけたのではないか。
1979年ライの2度目の来日に同行しています。
来日時のインタビューでライには本当に感謝していると語っています。
謙虚な方。
DO RE MI / RY COODER / SHOW TIME 1977年
DOUG SAHM AND BAND / 1973年
チキンスキンミュージックツアーのライブ録音盤。
フラーコヒメネスのアコーディオンがハマっています。
原曲はウディガスリー、ドレミとはお金の事。
高田渡さんが「銭がなけりゃ」でカヴァーした曲。
[NEW ORLEANS]
DAVID LINDLEY AND EL RAYO-X / WIN THIS RECORD / 1982
1978年 「JAZZ」 に初参加したデヴィッドリンドレー。
この人もライクーダーとは長い付き合いです。
ライより3つ年上。同じカリフォルニア州出身。
60年代はカレイドスコープというバンドに所属。
ライと同じギター弾き、スライドギターもマンドリンもこなす。
ほぼライクーダー。
ニューオリンズとデヴィッドリンドレー、無理やりのこじつけですが
セカンドアルバム「WIN THIS RECORD」1982作の中に
ミーターズ&ネヴィルブラザーズのメンバーで末っ子、シリルネヴィル作
「BROTHER JOHN」をカヴァーしているのでくっつけてみました。
原曲自体ニューオリンズを代表する曲だと思いますが
このカヴァーもよくできています。
デヴィッドリンドレーとライクーダー似ていますが歌声だけは全く違う。
ライクーダーの渋いトーンの声とは対照的に
デヴィッドリンドレーはクリアーなハイトーンヴォイス。
ファーストアルバムの化け物というタイトルとはつながらない
ポップでキャッチー。好きです。
1995年 ライクーダー&息子、
デヴィッドリンドレー&娘の四人で来日コンサートしています。
福岡公演もありました。
パンフ!
[INDIA]
A MEETING BY THE RIVER / RY COODER & BHATT VISHWA MOHAN
1993年インドの弦楽器奏者とのアルバム。全4曲インストのみ。
どんなものになるのか期待していた分やや肩すかし。悪くはないけど。
[AFRICA]
BONDE / RY COODER & ALI FARKA TOURE / TALKING TIMBUKTU / 1994
前回のインドコラボがあるから期待していなかったが
これはいい。
お互いに好き同士だったという関係性が良い結果を生んだのではないでしょうか。
西アフリカ、マリ出身のアリファルカトゥーレ。まさに砂漠のブルースマン。
アルバム全曲クオリティ高い。
[CALYPSO / CARIBBIANE]
LOVE IS THE ANSWER / VAN DYKE PARKS / CLANG OF THE YANKEE REEPER 1975
このコーナーは、かなり厳しいこじつけです。
ライクーダーがデビュー前スタジオミュージシャン時代に
知り合った重要人物の一人、
ヴァンダイクパークス。
作曲家、アレンジャー、プロデューサー、いろんな顔を持つ音楽奇才。
アメリカのルーツミュージックを掘り起こし新しいカタチにする方法など、
かなりライクーダーと似た考え方。
72年のセカンドアルバム「DISCOVER AMERICA」では
カリビアンミュージックのミクスチャーに挑戦。
サードアルバム「CLANG OF THE YANKEE REEPER」1975年作は
カリビアン路線を更に進めたアルバム。いいです。
APEMAN / EESO TRINIDAD STEEL BAND / ESSO / 1971
ヴァンダイクパークスがカリビアン路線を模索している時に
プロデュースしたトリニダード・トバゴのスティールドラムバンド、
ESSO TRINIDAD STEEL BANDの1971年作。
曲はなんとキンクス作品。ローラ対パワーマンから。
現代文明社会を皮肉ったレイデイヴィスらしい曲。エイプマン。
「文明社会のストレスだらけで暮らすより
ジャングルで暮らした方がいい」という内容。
続く。20-2へ。