(敬意を込めて敬称略)
マイケルジャクソンが亡くなって今月で10周忌だそうです。
音楽専門チャンネルでは特別番組も組まれています。
久しぶりに「スリラー」14分フルヴァージョンを見ました。
1983年12月公開。ジョンランディス監督。約35年前。
狼男にゾンビ。
ドキッとさせる演出もテンポがよく今見ても十分楽しめます。
美術も映画同等の細かさ。
映像のトーンもフィルムの質感が出て深みがあっていい。
音楽PVというよりほぼ映画。
印象的なダンスを集団でやり、かっこよく撮るというスタイルも
このPVから始まったような気がします。
他のPVですけどモーフィングとかもMJのPVで一般化したのではないでしょうか。
スリラーは1983年なのでまだフィルム撮影&フィルム編集だと思います。
以前ちょっと話しましたが私がCM業界に入った1987年
福岡はフィルム編集からビデオ編集に変わった時期です。
ビデオ編集といってもビデオカメラに変わったわけではありません。
番組ではすでにビデオカメラでしたがCM業界はフィルム撮影にこだわっていました。
ビデオカメラはしっかりくっきり写るが柔らかい空気感がなくなってしまうからです。
フィルムカメラの思い出をちょこっと。
(個人的な記憶なので間違っていたらごめんなさい)
私が入った会社にはスタジオと撮影部がありました。
スタジオには35ミリのアリフレックス2Cというカメラと
アニメ台のところに35ミリのミッチェル。16ミリカメラもあったと思います。
しかし制作部として入社したのでカメラには触らせてもらえません。
見るだけ。眺めるだけ。
こっそり助手の人に構造とか仕組み、フィルムのことを教えてもらうのみ。
触ったところを見つかったらこっぴどく怒られます。
撮影の時もファインダーは覗かしてもらえません。
どんなアングルなのか自分で想像するのみ。
ファインダーの映像をモニターに出すビジコンというものが
東京にはすでにあったと思いますが福岡にはありませんでした。
ファインダーを覗くところを見つかったらまた怒られます。
シュートするとアリフレックス2Cはカラカラと音を出します。
フィルムが回っている音です。1秒で24コマ進みます。
1秒で24枚撮りのフィルムがなくなるという妙な納得感がありました。
見た目はやや古いけどいい感じ。近くにあるけど触れない存在。
そんなムービーフィルムカメラとの出会いでした。
スタジオでは当然のことながら何度も泊まり込みになりました。
カポックの上で仮眠です。ネズミがいてもおかしくない
古いスタジオですが疲れているからまったく気になりません。
世の中バブルだということも遠い世界の話。
ある日カメラ助手の人がこっそり2Cに触らせてくれました。
テスト撮影の残りのフィルムを回させてくれたのです。
自分でファインダーを覗いてシュートスイッチを押す。カラカラと回る音がとても心地よかった。
その後、2Cからアリフレックス3型へモデルチェンジ。
カラカラ音が出ない同録用カメラ「BL」という機種も出ました。
3型はハイスピード、スローモーション撮影ができます。
最大120コマ。シズル撮影とかに使うのですが
普段の可愛らしいカラカラ音が4倍くらいの速さになるので
ギュイーンという恐ろしい音に変化します。怖いです。しかもフィルムがあっという間になくなります。
福岡では予算が厳しくセリフがあって録音をしないといけない状況でも
レンタル料金が高いBLを借りずに
カメラに毛布をぐるぐる巻いてカラカラが聞こえないようにして撮影をしていました。
なんともアナログ。涙ぐましい努力。
福岡は大阪、東京とは違い現像所もありません。
朝一番にフィルムを東京イマジカ現像所に入れるためには最終便にのせなければ間に合いません。
撮影がギリギリになり現場から原チャリで空港の運輸窓口まで直接持って行ったこともあります。
現像後、通常はカメラマンが立会い、色を合わせていく作業も同時に行うのですが
カメラマンの飛行機代金がないためイマジカ現像所の担当の方に
資料を送り電話で説明してお任せするということもありました。
亡くなられた市川準さん(CM&映画監督)が
「フィルムは作家にとっての原稿用紙のようなものだから
ケチってはいいものはできない」と撮影の時に言われていたそうです。
(芝居のやりとりを長回し撮影することで有名な市川さん)
尊敬する市川さんのお言葉。かっこいい。
しかし福岡の現場ではそんなことできません。
フィルムを節約しながらいい映像を目指す。工夫してやっていました。
フィルム撮影には不利な場所なのに、なぜそこまでしてフィルムにこだわるのか、、、、
それはフィルムトーンが仕上がりを大きく左右するものだと感じたからです。
映像に余白のようなものが生まれ説得力が増し言葉だけでは届かない
気分まで伝えてくれる。まさしく空気感です。
「フィルムでやるぞ」という志は
福岡の先輩たちの心意気が作ってくれたものだと思います。感謝。
デジタル時代になりビデオカメラも進化して
フィルムカメラとほぼ同じクオリティで撮影できるようになりました。
イマジカの東京現像所もなくなり今は大阪のみの営業に。
MJの「スリラー」実はレコードもCDも持っていません。
まともに聴いたことがないのです。失礼しました。
今度見つけたら買います。
GRAHAM PARKER / HOWLIN WIND 1976 ①
/ HEAT TREATMENT 1977 ②
/ STICK TO ME 1977 ③
/ SQUEEZING OUT SPARKS 1979 ④
70年代後半イギリスではパンクと交錯しながら盛り上がったパブロック。
STIFF RECORDスティッフなど小さなレーベルから
次々に新しい感覚のアーティストが生まれニューウェイブシーンに繋がっていきます。
パブロックとは200人程度収容でお酒が飲めて演奏スペースがある場所
「PUB」を中心に活動している人たちの総称。
ジャンルは様々ですが主にR&B R&Rをベースにイギリス人の解釈で
ビート化、ファンク化、自分たちなりに消化して焼き直し再生したものが多い。
日本でもミッシェルガンエレファントの登場で再び注目を浴びました。
パブロック好きです。自分の根っこ。
したがってパブロック愛聴盤多いです。
グレアムパーカー、1950年ロンドン生まれ。
オリジナルアルバム4枚目まではすべていいです。
(3と4の間にライブ盤あります、これもいい)
本人の歌、声、曲がいいのはもちろんですが
バックを支えているルーモアというグループがいいんです!
もともとソロ活動をしていたグレアムさん知人を通じて
紹介してもらったのがルーモアのメンバー。
職人気質でひらめき抜群、腕もいい、仕事も早い、ルーモア。
見た目はややおじさん、ルックス勝負はいたしません。
音楽の造詣が深く、どんなタイプの曲でもお任せあれ。
ギター:ブリンズリーシュウォーツ(元BRINSLEY SCHWARZ)
ギター:マーティンベルモント(元DUCKS DELUXE)
キーボード:ボブアンドリュース(元BRINSLEY SCHWARZ)
ベース:アンドリューボウドナー
ドラム:スティーブグールディング
THE RUMOUR / FROGS,SPROUTS,CLOGS AND KRAUTS 1979 ⑤
ルーモアのみで作ったアルバム。1枚目もいいがこの2枚目がベストでしょう。
いろんなタイプの曲が入っています。パブロックの楽しさ満載。
CARLEN CARTER / CARLEN CARTER 1978 ⑥
カーレンカーター、1955年テネシー州生まれ。
カントリー界の大御所ジョニーキャッシュが継父で、
元ニックロウの奥さん。バックはルーモア&ニック。
グレアムパーカーもバックヴォーカルで参加。
B面1曲め「NEVER TOGETHER BUT CLOSE SOMETIMES」
レゲエスカ風味ロックンロール気持ちいいです。さすが職人ルーモア!
FRANKIE MILLER / ONCE IN A BLUE MOON 1972 ⑦
フランキーミラー。 1949年スコットランド、グラスゴー生まれ。
ブリンズリーシュウォーツ(バンド)をバックにしたデビューアルバム。
アメリカン南部テイスト、ブルーアイドソウル。しゃがれ声がしみます。
何も知らずに聞いたらスコットランド人とイギリス人がやっているとは思わないでしょう。
GARLAND JEFFREYS / ESCAPE ARTIST 1981 ⑧
ガーランドジェフリーズ。1943年ニューヨークブルックリン生まれ。
ルーモアのベース、アンドリューボウドナーとドラム、スティーブグールディング二人が参加。
プロデュースはボブクリアマウンテン。
共同プロデュースにイギリスレゲエ界の顔役デニスボーヴェルなど。
強力なバック陣もさることながらガーランドの歌の説得力、表現力が素晴らしい!!
曲もいい!声もいい!演奏もいい!ミックスもいい!
ニューヨークを中心に60年代後半から活動。6枚目のアルバム。
同じ年に出たライヴアルバム ROCK’N’ROLL ADULTもベリーグッド!!